ニコラハウスの秘密

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in06ニコラハウスのかわいいさとホンモノ感の違和感は戦略と語る久々野智氏

――若者の街原宿、表参道エリアにあって、うさぎシュークリームや子どもたちに人気のキャラクターとのコラボ料理などなど、若いお客さんがたくさん集まりそうな店づくりですよね。ところが料理やスイーツは、大人好みの手の込んだメニューばかり。若者向けのカフェでこれだけ手の込んだスイーツや料理を提供することには、なんとなく違和感を感じます。

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うさぎモチーフがたくさんの店内

久々野智 たしかに今のニコラハウスはよく、いわゆるキャラクターカフェだとか、コンセプトカフェにカテゴリー分けされます。場合によっては、どうぶつカフェのグループに入れられたりもします(笑)。僕としては、興味を持っていただける入り口としては、それで構わないと思っていますし、「なんだか楽しそうな、カワイイお店があるね」というところから入ってきてもらえばいいと思っているんです。

ただ、きっかけは「かわいいから」であっても、若い人たちにホンモノに触れてもらいたいという思いが僕にはあるんです。ニコラさんの料理やスイーツは、見た目はかわいいけれど中身はホンモノですからね。

――そんなにまわりクドイことをしなくても、ふつうに大人向けに高級料理&スイーツを出してもいいんじゃないかと思ったりしますが。

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腕は確かな料理研究家ニコラシャール

久々野智 落ち着いた大人の人を相手にホンモノを見せたり、提供するお店はたくさんあります。でも、それっていかにも当たり前じゃないですか。別に僕たちがそれをやらなくてもいいと思うんですよ。それよりも、若い人たちにホンモノを味わってもらって、“マイファースト○○○”じゃないですけど、自分の人生で初めて触れる本当においしい料理やスイーツの思い出にしてもらったほうが、自分たちのやっている意味があるんじゃないかと思っているんですね。きっとそのほうがお客さまにも喜んでもらえるし、自分たちもやりがいがありますから。

――若い人にホンモノの味を知ってもらうことは、とても大事だし意味があると思います。ただスイーツにしても料理にしても、あまりに“ホンモノ”へのこだわりが強くても、若い客層には伝わらないのではないか、という不安も残りますが……。

久々野智 たしかに原宿でこういうお店をやっていることもあって、若い人向けの商売に関する相談を受けることも多いのですが、よく「今の若い女性にはこういうのがウケますよね」という言い方をされます。でもそういう表現をすること自体、失礼だと思うんですよ。なんとなく見下した感じがしませんか? そういう意識って、表面をどう繕っても見透かされてしまうものなんです。

「子ども騙し」という言い方がありますよね。僕は、「子どもに子ども騙しは通用しない」と思っています。 子どもは“小さな大人”なんですよ。大人みたいに言葉でうまく表現できないだけで、じつはいろいろなことを察知しています。子どもに感動してもらいたいなら、大人が本気で作って、大人が感動するものじゃないと無理だと思うんですよ。

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うさみみをつけてスイーツをシェアして楽しむ
オンナノコたち。

それと同じで、「原宿に来る若い女性ってこういうのが好きだよね。こういうのを出しておけば商売になるよね」……という考えでやっていると、お客さまからは簡単に見透かされて、感動してもらえるサービスも商品も提供できないというのが僕の考えなんです。

――たしかにいいものは子どもにだってわかる、というのはその通りだと私も思います。ただ、10代の子どもにとって、お店のこだわりが理解できるのか、そういうことに関心があるのかとギモンに思ってしまうんですが……。

久々野智 業界の先輩方からは、「原宿でこういうクオリティのものをやるのは、原価が高すぎるし、やめたほうがいい」というアドバイスはよくいただきます。若い人たちにはそこまでの価値がわからないと言うのですね。でも、最初はわからなくてもいいんです。かわいいキャラクターが売りのカフェだと思って来たら、思っていたのと違う。予想以上においしい。それでいいんじゃないかと。

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ひとつひとつこだわりが詰まった、うさぎシュークリーム

「これは何なの?」と疑問に思ったり、味覚で「あれ?」と引っかかったときに、「この中に入っているリンゴはキャラメルで煮たあとに入れてるんです」「これは生クリームではなくムース。砂糖を少なくして果汁で甘さを出しているんですよ」という感じで、うちのスタッフが説明する。そうするとお客さまは「そんなこともできるんですね!」「こんなに手の込んだもの、初めて食べました!」と素直な感想を口にしてくれますよ。

こういう経験こそが、さっき言った“キラキラした思い出”であり、“ドキドキする体験”じゃないですか。「わあ、かわいい! 行ってみよう!」で来ていただいて、そこを接点として、ホンモノに触れてもらい、一生の思い出をつくってもらえたら、それこそが僕たちの狙いであり、願いでもあるんです。

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