ニコラハウスの秘密

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さまざまな要素がきっかけとなって、ブランドを好きになってもらえたらと語る久々野智氏

――ところで、これだけの人気店でありながら、多店舗展開をしてこなかったのも不思議ですね。

久々野智 今年に入って、うさぎのシュークリームほか、定番のスイーツと新製品を購入していただけるお店を、秋葉原、立川などでオープンしたところです。今後は埼玉や大阪にも出店を予定しています。ただ、こうしてファンの方に集ってもらい、イベントを行い、スタッフとの交流を楽しんでいただくお店は、この原宿のお店だけになっていて、当分はそれでいいと思っています。

僕らの世代は、大人になるまでに大量生産、大量消費の世界にさんざん触れてきて、それに対してのある種の無常感を抱いています。あれほど人気を集めた大手ファストフードのお店が苦境に立たされていたり、チェーン店の居酒屋がかつてほど流行らなくなってしまったりしている。みんなが同じようなものを同じように食べ、チェーン店として店舗数が多いほうがいい、スケールの拡大こそがビジネスの成功である、という価値観がここにきて大きく変わってきていますよね。僕自身も、そういう方向で商売を大きくしていくことに対して、ピンとくるものがないんです。今、それをやっても意味があるのかなと。

世界的スケールで画一的に売っていくビジネスは確かに大きく育ちますし、それはそれでいいのですが、ビジネスの世界には、揺り戻しというのが必ずあって、この頃は「全部それだとつまらないよね」と考える人もかなり増えています。

だからこそニコラハウスは、大量生産、大量消費とは反対の方向へ成長していきたい。これからお店が増えていったとしても、結局は一つひとつのお店がお客さまにドキドキする体験とか、その場でしか味わえない思い出を提供できるお店でありたいですし、ホンモノに触れていただけるお店でありたい。そうした中で、お客さまに繰り返し来てもらえるような“発見”をいかに用意していけるかの勝負だと思っています。

――大量生産、大量消費が経済効率を最大にする仕組みだとすると、ニコラハウスの進む方向は、ビジネスとして非効率ということでもありますね。効率よりも大切にしているもの、そこにニコラハウスのブランドが持つ魅力が隠されているという感じがします。

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キラキラした店内でキラキラの思い出作りを!

久々野智 極端なことを言うと、ニコラハウスというのは、本質的にカフェでも、レストランでもないと僕は、思っています。ニコラハウスというお店に謎が多かったり、よくわからないところがあるとするなら、そういうことなんじゃないでしょうか。本当に僕の思いは、キラキラとした思い出をお客さまに持って帰っていただけるかどうか、その一点に尽きます。料理やスイーツだけでなく、数々のイベントやお店のインテリアや雑貨、アンティークにいたるまで、様々なフックを用意して、その方なりの楽しみ方をしていただけたら、それ以上にうれしいことはないですね。

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自身が手がけたニコラハウスについて終始笑顔で語った久々野智氏

久々野智氏の話は聞けば聞くほど意外なことの連続。今もまだニコラハウスの志向するものがわかってきたようであり、まだまだわからないような気分でもある。ただニコラハウスというお店は、久々野智さんのブランドづくりのセンスとビジネスの理念が反映されたブランドであり、それをニコラさんという一流の料理研究家と、スタッフみんなが力を合わせて作り上げているお店だということはわかってきた。そしてとにかくお客さんに、生涯忘れられない大切な思い出を提供したい、という思いがよく伝わってきた。正直、今後のニコラハウスの展開は予測がつかない。だからこそ目が離せないのだ。

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